ゆったりんご | 観る、読む、思考、書き、創る、そして眠る、そんな日々。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Posted by ゆなりんご on  | 

イキウメ 『散歩する侵略者』@シアター・トラム

『散歩する侵略者』(作・演出 前川知大)の最終公演を観てきた。
当日券の立ち見の観客も結構いた。
イキウメの公演は初めて。

この題名の「侵略者」とは人間の中に入り込んだ人間のふりをした異星人のことだ。
劇中では「宇宙人」と言っていた。
その「宇宙人」は、地球を侵略するため、地球に調査しに来ていたのだ。
特殊な能力を使って、人間から「概念」を奪う。
そうやって地球のことを学び、収穫していく。
一方、「概念」を奪われた人間は、そのものの言葉を知っていても、理解することが出来なくなってしまう。
そうやって人間たる生活が出来なくなる人が続出する。

とこうかくと単なるSFもの?侵略系ファンタジー?のように見えるが、そうではない。
その「宇宙人」は私たちにとっては何なのか。

次第に、宇宙人は正体を明かし始める。
というか、初めから本当のことを言っていた宇宙人もいたが、
誰もそれが現実のことだと思う人はいない。
端から、それは戯れだ、と取り合わない。
そうしているうちに、また一人犠牲になる。
ようやく、これは一大事だと気付いた人間が、ほかの人間に伝えようとしても、
一向に取り合わない、信じない、そんな事が起きるわけない、と思っている。

でも、現実に起きているのだ。

侵略される、とわかっていても何もしない。
ぴんと来ていない、といった方のがいいのか。

今、私たちがさらされている問題を想像せずにはいられない。
もちろん、そのことだけではないが、意識して書かれている。
この戯曲自体は震災の前に書かれたものだが、その後役者とも話し合って、再考したそうです。
(徳永京子取材・構成「僕らの好きな「恐怖」対談 黒沢清×前川知大」前川知大著『散歩する侵略者』エッチビィ株式会社、2011)


「宇宙人」たちはそろそろ自分たちの星に帰るという。
地球の情報も得たし、侵略するために。
でも、「宇宙人」たちが入った人間は、彼らが抜けた後死を迎えなければならない。

夫が「宇宙人」に入られてしまったひとりの女性がいる。
彼女は「愛」という概念はもう奪った?と彼に聞く。
彼は、いやまだだ、という。欲しいけど、誰も話したがらない、と。
彼女は、じゃぁそれを私から奪って、という。
今のあなたにそれをイメージ出来るのは、私だけだから、と。
それに、あなた、死んじゃうんでしょ…?と。
彼は、戸惑いつつも彼女からそれを奪う…。

その「宇宙人」は「愛」という概念を奪い、それを体感し、理解した時、
自分らのこれからの目的も、おそらく今までしてきたことも、わからなくなってしまう。

話は、ここで終わる。
最後は、我々人間がとても身近で、大切にしている「愛」で終わった。
「愛」のもつ偉大さで、何かが変わる。かもしれない、という可能性を残して。

最後のシーンは、かなりの人が心を動かされていたようだった。
鼻をすする音が輪唱していた。
わたしも、演劇の公演で初めて涙が頬を伝った。
(うるうるすることはあっても、流したことはなかったなぁ。)

でも、ここで終わっちゃうのか、とも思った。
これでは、「愛」の力でなんとかなっちゃうのかも、という余韻しか残らない。

あの後、「愛」を知った「宇宙人」は、その後地球を侵略しにくるのだろうか。こないのだろうか。
「概念」を奪われ、病的になってしまった人間たちは?
もとに戻れるのだろうか、一生そのままなのか。
「宇宙人」が侵略してくるかもしれない、とわかっている人間たちはどうしたのか。
何をしたのか、何もしないのか。

その間、強烈に発してきたメッセージが最後にどこにも効いてない。

問題が起きた後、彼らは何をしたか。
その行動を描くことによって、
ようやく最後の想像を観客にゆだねられると思うのだ。

最後だけ、尻切れトンボな感じがしてしまうが、
でも、私はこの作品に好意的である。
終演後、しばらく動けなくなるなんて、めったにない。
放心状態で頭や心を整理し、落ち着けるのに時間を要しました。
素晴らしかった。




関連記事

Category : かんげき
Posted by ゆなりんご on  | 0 comments  0 trackback

Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

trackbackURL:http://yuttari05.blog22.fc2.com/tb.php/557-81904472
該当の記事は見つかりませんでした。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。